小学校の持久走大会の時期です。

私が小学校のころ、高学年は学校の外周がコースでした。

外なので電柱があって、その電柱を目標に、

次はあの電柱まで、次はあの電柱まで、、

と走ったことを思い出しました。

もし、あなたが

「お腹が空いた・・何か食べたいな」

と感じたら、とりあえず明日までは我慢しましょう。

お腹が空いたけど、とりあえず明日まで頑張る。

辛抱する。

明日になったら、また明日まで我慢する。

そして

食べたいけど週末まで我慢する。

週末がきたら、次の週末まで我慢する、、

そして次の週末がきたら、次の週末まで、、と自分を騙しながら、1ヶ月間我慢するみたいな、感じです

そういえば、

小学校だったかな、中学校だったかな、

「あの坂をのぼれば海が見える・・・」

というフレーズの話が教科書に載っていました。

簡単に言えば

あの坂を登れば海が見える、、そう言い聞かせながら、というかそう信じて、いくつもの峠を超えて最後には海にたどり着く、という話だったと思います。

うろ覚えです。

でも、これは大事な考え方です。

小さな目標があって、とりあえずはそこまで行く。

そこまで行ったら、次の目標へ。

あの坂をのぼれば海が見える、

そう信じているから頑張れます。

最初から峠を10回超えないと海にたどり着けない、って言われたらくじけたかもしれません。

あの坂を登れば、、と言われたので、目の前にある坂を必死にのぼることを繰り返してゴールにたどりつく、という素晴らしいダイエット方法の基礎を国語の教科書で紹介してくれていたみたいです。

GO to Eatで外食ですか?

それもいいでしょう。

それなら朝と昼は我慢しましょう。

今日の夜まで我慢しよう。

昼ご飯を我慢すれば夜ご飯が食べれる。

ってことで。


ここまできて気になりました。

あの坂を登れば・・・

気になったので調べました。

中学校1年の国語の教科書だったようです。

知らない人のためにご紹介。

グーグル先生ありがとう。


「小さな町の風景」杉みきこ

あの坂をのぼれば、海が見える。
少年は、朝から歩いていた。
草いきれがむっとたちこめる山道である。
顔も背すじも汗にまみれ、休まず歩く息づかいがあらい。
あの坂をのぼれば、海が見える。
それは、幼いころ、添い寝の祖母から、
いつも子守唄のように聞かされたことだった。
うちの裏の、あの山を一つこえれば、
海が見えるんだよ、と。
その、山一つ、という言葉を、少年は正直に
そのまま受けとめていたのだが、それはどうやら、
しごく大ざっぱな言葉のあやだったらしい。
現に、今こうして、峠を二つ三つとこえても、
まだ海は見えてこないのだから。
それでも少年は、呪文のように心に唱えて、のぼってゆく。
あの坂をのぼれば、海が見える。
のぼりきるまで、あと数歩。
半ばかけだすようにして、少年はその頂に立つ。
しかし、見下ろす行く手は、またも波のように、
くだってのぼって、その先の見えない、
長い長い山道だった。
少年は、がくがくする足をふみしめて、
もう一度気力を奮い起こす。
あの坂をのぼれば、海が見える。
少年は、今、どうしても海を見たいのだった。
細かく言えばきりもないが、やりたくてやれないことの
数々の重荷が背に積もり積もったとき、
少年は、磁石が北を指すように、
まっすぐに海を思ったのである。
自分の足で、海を見てこよう。
山一つこえたら、本当に海があるのを確かめてこよう、と。
あの坂をのぼれば、海が見える。
しかし、まだ海は見えなかった。
はうようにしてのぼってきたこの坂の行く手も、
やはり今までと同じ、果てしない上がり下りの
くり返しだったのである。
もう、やめよう。
急に、道ばたに座りこんで、
少年はうめくようにそう思った。
こんなにつらい思いをして、
いったいなんの得があるのか。
この先、山をいくつこえたところで、
本当に海へ出られるのかどうか、わかったものじゃない。
額ににじみ出る汗をそのままに、草の上に座って、
通りぬける山風にふかれていると、
なにもかも、どうでもよくなってくる。
じわじわと、疲労が胸につきあげてきた。
日は次第に高くなる。
これから帰る道のりの長さを思って、
重いため息をついたとき、少年はふと、
生きものの声を耳にしたと思った。
声は上から来る。
ふりあおぐと、すぐ頭上を、光が走った。
翼の長い、真っ白い大きな鳥が一羽、
ゆっくりと羽ばたいて、先導するように次の峠を
こえてゆく。
あれは、海鳥だ!
少年はとっさに立ち上がった。
海鳥がいる。
海が近いのにちがいない。
そういえば、あの坂の上の空の色は、
確かに海へと続くあさぎ色だ。
今度こそ、海に着けるのか。
それでも、ややためらって、行く手を見はるかす
少年の目の前を、ちょうのようにひらひらと、
白いものが舞い落ちる。
てのひらをすぼめて受けとめると、それは、
雪のようなひとひらの羽毛だった。
あの鳥の、おくりものだ。
ただ一片の羽根だけれど、それはたちまち少年の心に、
白い大きな翼となって羽ばたいた。
あの坂をのぼれば、海が見える。
少年はもう一度、力をこめてつぶやく。
しかし、そうでなくともよかった。
今はたとえ、このあと三つの坂、
四つの坂をこえることになろうとも、
必ず海に行き着くことができる、
行き着いてみせる。
白い小さな羽根をてのひらにしっかりとくるんで、
ゆっくりと坂をのぼってゆく少年の耳に
あるいは心の奥にか
かすかなしおざいのひびきが聞こえ始めていた。

いいなこれ。

勇気を与えてくれる。